カテゴリ:andsuddenly( 2 )
隔たった時間の形状
『遠い声 / 10minutes』
                                  herpiano

 
 形とはどのように影響を及ぼすものだろうか。一本のカセットテープ。

 THE BANDというバンドの最後のライブを収めた『THE LAST WALTS』という映像作品がある。監督はマーティン・スコセッシ。
 作品は一曲から二曲の演奏の間に、メンバーの、彼らが歩んできた時間への回想が挿まれる、という形で構成されている。回想は彼らが初めて立ったステージ、バンドの結成の経緯、廻った街の記憶、彼らが時間を共にしてきた人間との思い出などが話され、最後にギタリストであるロビー・ロバートソンの口から長いツアー生活への疲弊が、そのような生活の中で命を落としていった友人達の名を挙げながら語られ、それらの想いを葬送するような曲で終わる。
 作家が死ぬと時代が終わる、と言ったのは誰であっただろう。『THE LAST WALTS』は、一つのバンドの解散を使って一つの時代の終焉を撮ろうとした。それはおそらくその真只中において、その時代を撮りきることの出来なかったスコセッシの野心、想いであったのかもしれない。
 私が、DVDではなくVHSの『THE LAST WALTS』に魅力を感じるのは、そのスコセッシの見ていた、或いは描いていた映像は、VHSの映像に近いはずだと思うからである。『THE LAST WALTS』は、ドキュメントと呼ぶにはあまりにも画面にスコセッシの体温が放たれすぎている。それは彼もまたその時代を過ごしてきた者の記憶を持つためであるからだろう。"caravan"で輝くヴァン・モリソンのスパンコールが瞳を映す夜露のように画面を濡らすのを見ていると、それ以上に見えなくてはならないものなど、ここには必要ないように思える。

  『遠い声 / 10minutes』という二つの曲でherpianoは、過去が時間の経過と共に次第に流れから切り離されたシーンや雰囲気になってのち、響いてくる音を汲み取って鳴らそうとする。記憶は寄せる波のように不意に訪れ、水を掴むように朧げではあるが、しかし後にはその熱が残るように確かさを与えるものでもある。勿論、その全てが暖かなものになることはないだろうが、それもまた一つの側面に過ぎない。ここで彼らは、記憶を体温を伴った視線で描こうとする。そしてそれを少々面倒でありながら、こうしてカセットテープという形としたことは、全てを鮮明に描き出すということとは違う、静かであるが確かな効果となっているように思われる。テープのノイズによって曖昧になる細部。音はそのようなところからこそ、聞こえてくるとでもいうように。

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by burnthemap | 2007-12-26 12:00 | andsuddenly
notremusique
 ディストロで扱っている作品について、その紹介となるような文章を書いていく予定です。一口に紹介といっても様々ですが、ここでは知識をもってバンドの現在を測るというものではなく、作品の持つムードを伝えることの出来るようなものを目指したいと考えています。
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by burnthemap | 2007-12-02 00:00 | andsuddenly